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ブラックフライデーとはアメリカの感謝祭<サンクスギビングデー>の翌日のこと。アメリカ全体でクリスマスシーズンに向けた大セールがおこなわれ、1年でもっとも店が繁盛する日です。近年日本でも開催されるようになりましたが、どんな意味があるか知っていますか?
日本では感謝祭の文化がないため、セールといえば12月のイメージがあります。しかしアメリカでは11月末からホリデーシーズンに入るため、11月の第4金曜日に大セール「ブラックフライデー」が開催されるのです。
ではその「ブラック」とは何なのか気になりませんか? 「経済が暗い・悪い」とイメージされてもおかしくないブラックフライデーの語源は、実はセールとは無縁のことから始まりました。
■経済危機を表現するパワーワードだった!
時は1869年、2人のスゴ腕投資家ジェイ・グールドとジム・フィスクが金の買い占めに失敗し、ウォール街で大規模な金融危機「暗黒の金曜日(Black Friday)」が起こったことがそもそもの言葉のきっかけでした。しかしそれよりも有名なのは、1929年に発生し世界に影響を与えることになった『ウォール街大暴落』ではないでしょうか。株価が下落した一連の日は「ブラックサーズデー」、「ブラックフライデー」、「ブラックマンデー」、「ブラックチューズデー」などと呼ばれ、多くのメディアがこぞって使用するようになりました。
では、金融恐慌が語源か、というとそうではありません。私たちが知る意味での「ブラックフライデー」の由来はまた別にあるのです。
■やっぱり悪い意味?警察が名付けた「ブラックフライデー」
この名前を付けたのは1950年頃のフィラデルフィア警察でした。
以前からアメリカでは感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日は大規模なセールの幕開けとして祝日扱いされており、実質木・金・土・日の4連休が与えられていました。その日は朝から晩まで小売店に人があふれ返り、さらにはその4日間のために多くの人が仕事を「病欠」することが悪習だったのです。
人手がないのに客は増加するばかり。店が混雑してしまうのは従業員のズル休みも原因の一つだと考えられています。さらにクリスマスシーズンの到来を意味するこの日は特に人混みや交通渋滞が激しく、交通事故や暴力事件が起こることも珍しくはありません。
修羅場と化した街をコントロールするために、市内の警察官も長期のハードワークを強いられていました。それは警察にとって喜ばしいことではなかったため、仕事が急増するこの日を「ブラックフライデー」と呼んだのです。
■ネガポジ転換で根付いた新解釈
ネガティブな意味である「ブラックフライデー」という表現に難色を示したのは、言うまでもなく小売店でした。小売店にとって感謝祭翌日の金曜日は1年でもっとも収益が上がる日。その日がブラックフライデーと呼ばれることに、店側が不快感を示すのも無理はありません。そこで警察が「小売店が収益増により黒字になる」と新たな解釈を与えたところ、小売店も納得。ポジティブな意味で使われるようになっていきました。
現在ではブラックフライデーは小売店にとって「年に1度の大セールで割引やプロモーションをおこない大きな利益を得られる日」としてポジティブなイメージが定着しています。
■笑い事ではない「ブラック(アイ)・フライデー」
結論、小売店はブラックフライデーがポジティブに見えるようにしたかった、というもの。確かにその狙いは外れてはいませんが、いくらポジティブな意味になったとしても警察の悩みのタネが減っているわけではありません。日本では考えにくいですが、人が押し寄せる店内ではケガ人が続出し、商品の取り合いが銃撃事件に発展することも珍しくないのです。
戦争のようなショッピングを終えた時、「ブラックアイ・フライデー(目の周りにアザができる日)」とならないように注意して楽しむことがもっとも大切ですね。